「親が亡くなり、実家が空き家になってしまった…」
こうしたお悩みを抱えている方は多く、近年増加傾向にあります。しかし、空き家を放置してしまうと、思わぬトラブルや経済的な損失を招く可能性があります。
そうなってしまう前に知っておくべきことを順番に解説します。
相続登記の義務化
2024年4月1日より、相続登記が義務化されました。相続人全員が所有権を取得したことを知った日から3年以内に正当な理由なく登記申請を怠った場合は、10万円以下の過料が科される可能性もあります。また、売却や賃貸などの手続きも進められません。
遺産分割協議による単独相続の推奨
複数の相続人がいる場合、遺産分割協議は必須です。しかし期限内に協議がまとまらないと、共有名義のまま登記手続きせざるをえないことも。共有名義の場合、売却や賃貸には全員の同意が必要となり、手続きが煩雑になるだけでなく、トラブルに発展するリスクも高くなります。
そこで、遺産分割による単独名義での相続を推奨します。単独名義であれば、売却や賃貸などの取引がスムーズに進められ、将来的なトラブルを回避することができます。

相続登記の詳細についてはコチラの記事を参照ください。
空き家を放置することのデメリット
空き家を放置していると、以下のようなデメリットが生じます。
- 建物の劣化:雨漏りやシロアリ被害など、建物の劣化が進行し、修繕費用がかさむ
- 地域の景観悪化:雑草が生い茂ったり、ゴミが散乱したりして、地域の景観を悪化させる
- 不法投棄:不法投棄の場所として利用される可能性がある
- 犯罪の温床:放置された空き家は犯罪の温床となる可能性があり、ここ太田市でも近年、空き家を狙った空き巣が増加傾向にある
- 固定資産税などの負担:住んでいなくても、固定資産税や都市計画税などの負担は発生
特に以下のような状況の空き家は市町村からの指導・勧告を受ける可能性があります。
- そのまま放置すると倒壊などの危険性がある …特定空き家
- 窓や壁が破損しているなど管理が不十分 …管理不全空き家
令和5年12月13日より施行された「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部改正」によって、特定空き家や管理不全空き家として指導を受け、それに従わずに勧告を受けると固定資産税等の軽減措置(住宅用地特例)が受けられなくなります。
住宅用地特例とは、住宅が建つ土地にかかる固定資産税が6分の1や3分の1などに減額される特例です。詳細はコチラの記事内を参照ください。
勧告によっても改善が行われない場合は、勧告された対応を実施するよう命令が出されます。そこで命令に従わなかった空き家の所有者には、50万円以下の過料が科せられます。
命令によっても状況が改善されないときは、市町村は行政代執行を行うことができます。行政代執行とは、市町村が特定空き家の所有者に代わって解体などの是正措置を行い、その費用を所有者から徴収することです。
特定空き家・管理不全空き家に認定された場合は、このように段階的に厳しい措置がとられることになります。空き家を適切に管理し、その後の処分や活用方法を検討することはとても重要なことなのです。

空き家売却のメリットとデメリット
空き家売却には、以下のようなメリットとデメリットがあります。
メリット
- 現金化できる: 空き家を売却することで、現金化することができます。
- 固定資産税などの負担がなくなる: 売却すれば、固定資産税などの負担がなくなります。
- 将来的なトラブルを回避できる: 将来的に相続が発生した際に、トラブルになる可能性を低減できます。
デメリット
- 売却費用がかかる: 売却には、仲介手数料、印紙税、残置物撤去などの費用がかかります。
- 希望の価格で売却できない可能性がある: 市場動向によっては、希望の価格で売却できない可能性があります。
- 解体費用がかかる場合がある: 建物の状態によっては解体費用がかかる場合があります。
空き家売却による税制メリット
通常、不動産を売却し利益が出た場合は譲渡所得税が課税されます。ただし、相続した空き家の場合「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」によって、譲渡所得の金額から最高3,000万円まで控除できる可能性があります。
対象となる空き家は、相続の開始の直前時点において亡くなった人が居住のために使用していた家屋で、以下の要件をすべて満たすものです。
- 昭和56年5月31日以前に建築されたこと
- 区分所有建物登記がされている建物でないこと
- 相続の開始の直前において亡くなった人以外に居住をしていた人がいなかったこと
特例を適用するための要件は以下のとおりです。
- 譲渡人が、相続または遺贈により空き家を取得したこと
- 空き家を売るか、空き家とその敷地を売る場合は、相続のときから譲渡のときまで事業、貸付け、居住などに使用しておらず、譲渡時に空き家が一定の耐震基準を満たすこと
- 相続または遺贈により取得した空き家を取壊したあとに、その敷地を売る場合は、相続のときから譲渡のときまで事業、貸付け、居住などに使用しておらず、取り壊し後にほかの建物や構築物などを建築していないこと
- 相続開始から3年を経過した年の12月31日までに売ること
- 売却代金が1億円以下であること(相続人が複数の場合は1人につき1億円ではなく、合算した売却代金が1億円以下であること)
- 売った空き家等について、相続財産を譲渡した場合の取得費の特例や収用等の場合の特別控除など、ほかの特例の適用を受けていないこと
- 同一の亡くなった人からの相続または遺贈により取得した空き家等について、空き家特例の適用を受けていないこと
- 空き家等の売却先が親子や夫婦など特別の関係がある人でないこと
このように対象物件も適用要件も細かく定められているので、注意が必要です。
また「空き家特例」は適用期限が延長され、2027年12月31日までとなりました。また現行制度では譲渡前に耐震改修工事や建物の取り壊しをする必要がありましたが、2024年1月以降に行う譲渡については、譲渡の日の属する年の翌年2月15日までの間に耐震改修や取り壊しをすれば特例を適用することができるようになります。
特例の適用を受けるには、必要書類を添え、確定申告をする必要があります。適用には期限があるため、空き家を売る場合は早めに準備することをおススメします。
詳細は国税庁のホームページをご参照ください。

空き家解体のメリットとデメリット
空き家解体には、以下のようなメリットとデメリットがあります。
メリット
- 土地を有効活用できる:解体することで、土地を駐車場や更地として有効活用することができます。
- 近隣トラブルを回避できる:倒壊の危険がある空き家などは、解体することで近隣トラブルを回避することができます。
- 解体の助成金が受けられる:一定の条件を満たしていれば自治体から解体費用の助成金が受けられることがあります。詳しくは各自治体にお問合せください。
- 前項目内容の「空き家特例」で3000万円控除を受けられる可能性がある:ただし他の要件が欠けていると適用できないので、特例適用を目的として解体する場合には税理士など専門家に相談することをおススメします。
デメリット
- 解体費用がかかる: 解体には、建物や構造物、アスベストなどの除去費用がかかります。
- 固定資産税が高くなる:解体すると建物分の固定資産税負担はなくなります。ただし建物があることで土地の固定資産税は軽減されています。つまり、空き家を解体すると土地の固定資産税が高くなり、土地と建物トータルで考えると高くなることが多いです。

空き家賃貸のメリットとデメリット
空き家賃貸には、以下のようなメリットとデメリットがあります。
メリット
- 家賃収入を得られる:空き家を賃貸することで、家賃収入を得ることができます。
- 建物の管理状況が維持される:定期的な修繕やメンテナンスを行うことになるため、建物の管理状況が維持されます。
デメリット
- 空室リスクがある: 入居者がみつからない場合、家賃収入を得ることができず、固定資産税などの負担を続けることになります。
- 修繕費などの負担が発生する: 入居者が退去した際や、入居中に設備が破損した場合などの修繕費を負担する必要があります。
- 入居者トラブルが発生する可能性がある: 家賃滞納や騒音などのトラブルが起こる場合があります。
リノベーション・リフォームをして自ら住む
空き家に自分自身が住むことも選択肢の一つです。
自分の生まれ育った実家が空き家となってしまった場合、思い入れが強くなかなか処分に踏み切れない場合もあります。そんなときは、思い切ってそこに住むのもいいのではと思います。
古い和風の家でも、リノベーションをしておしゃれな和モダンの家に変身させることができます。また、洋風の家に和の要素をプラスして、落ち着ける我が家にリノベーションすることも可能です。
ただしリノベーションには費用がかかります。すでに別宅に住んでいる場合は、そこの処分や引越しなど、考えることも費用も山積みになることでしょう。

空き家の管理
空き家の処分に時間がかかる場合は、管理を委託する方法もあります。不動産業者など管理会社に任せることで、以下の業務を代行してもらうことができます。
- 定期的な巡回:建物内の空気が停滞していると家は一気に劣化します。定期的に建物の状態を確認し空気を入れ替え、必要があれば修繕を行う
- 草刈りや清掃:敷地内を清潔に保つ
- 定期で賃貸する:将来的に処分or使う予定があるのであれば、定期借家として入居者を探す
処分や活用方法を選ぶ際のポイント
空き家の処分や活用方法を選ぶ際には、以下のポイントを考慮する必要があります。
- 自身のライフプラン: 将来的にどのような暮らしがしたいか、どんな家に住みたいか、どのような収入を得たいか
- 空き家の状態: 建物の劣化や周辺環境への悪影響などはひっ迫した状況でないか
- 経済的な状況: 売却や解体、リフォームなどそれぞれにかかる費用どの程度か
- 時間的な制約: 売却や賃貸には時間がかかるため、時間的な制約がある場合は早めに決断する必要がある
相続不動産についてどんなことでもご相談ください!
相続した実家は大切な財産です。空き家を放置せずに、適切な対応を取ることが重要です。
とこのま不動産は、相続登記や遺産分割協議、空き家管理など、相続不動産における様々なことについてご相談にのることができます。
売却や賃貸を前提とするのではなく、お客様の気持ちに寄り添った形で空き家をどうしていくべきか、最適なご提案をさせていただきます。
どうぞお気軽にご相談ください。
